Another Words

突然創作を載せたり載せなかったりします。

薛洋を救いたいプロジェクトその13

ひと月後、江澄が雲深不知処に訪ねてきた。蓝氏の薬のおかげで艾渊の身体がだいぶ良くなったことのへ礼のあと、彼を養子に迎えることにしたと告げた。

江澄が艾渊を探しに行かなかったのはなかなか気持ちの整理がつかなかったからなのだと言う。けれど、見つかった時の死にかけた姿を見て、今度こそ間違わない、こいつを信じる、と決めたのだと言っていた。ごちゃごちゃ言ってくる連中には「何が起きても宗主の自分が責任を取るから、今の、これからのこいつを見てくれ」と言うのだと。

「江氏を彼に継いでもらうことも考えている」という江澄に、そうか、とだけ答えたものの、魏无羡は心から喜んでいた。

 

 

江澄が帰った後、早速魏无羡は軽口を叩き始める。

「江澄も、養子より前に嫁をもらうべきだと思うんだけど。そもそも今の四大世家、まあ金凌はまだガキだからともかく、宗主が全部独り身なのはどうなんだ?」

「兄上には縁談はあるようだが、叔父上が全部断っている。兄上は当分一人でいたいようだ」

沢蕪君は金光瑶のことで自分の「人を見る目」にすっかり自信を喪ってしまい、誰かと契りを結ぶことを恐れているのだろう、と魏无羡は思っていた。

「蓝氏はそうすると、誰が継ぐことになるんだ?」

「おそらくは思追だろう」

蓝思追は幼い頃から雲深不知処で育っているし形式的には蓝忘机の養子のような形だが、血縁的には温氏の人間である。

かつて仙門においては血縁より師弟関係を重視していたのが、ある時期から血縁による結束や継承が重んじられるようになった。いわゆる四大、或いは五大世家と言うのもそうしてできたのだが、それは決して良いことばかりではなかった、と思う。

この先こうして四大世家のうち2つに外からの血が入るということは、きっとこの世界にも新しい流れが起きているのだろうと思う。

「あいつは歳の割にはものすごく思慮深いからな。まあ昔の含光君はもっと落ち着いてたけど」

そして魏无羡はつくづく思うのだ。いま目の前にいるこの男の、自分に対する信頼の強さに、自分は果たして応えることができているのだろうかと。

「私がそれほど冷静沈着ではないことは、君が一番知っている」

蓝忘机はそう言って立ち上がり、ひょいと魏无羡の膝裏に腕をかけて横抱きにすると、寝台へ運んでいった。

「含光君、何?急にしたくなった?」

「ずっと我慢していた」

「するのを?いやいやそんなことはないな、ちゃんと約束通り毎日してるだろ?昨日だって…」

「君が、私以外の人間のことをずっと気にかけているのが、苦しかった」

「お前はほんと、時々とんでもなく心が狭いよな蓝湛」

「私が、誰のせいでそうなったと?」

そう言って魏无羡を寝台に下ろすと、そのまま覆いかぶさって激しく唇を貪った。