Another Words

突然創作を載せたり載せなかったりします。

予兆(魔道祖師)

蓝忘机は性欲が強い。

もともと子供の頃から自分の体の中心にある陽物が人並外れて大きいことは自覚していた。雅正を旨とする蓝氏においてはたとえ子供同士であっても見せ合ったりましてや比較したりということはなかったが、それでも着替えの時などに見えてしまうそれが自分だけ特に大きい、ということには気がついていた。とはいえ、毎朝立ち上がるそれは生理現象であり、特に何かを感じるでもなくそういうものだと思ってきた。

それが変わったのは10代の半ばの頃。座学のために雲深不知処に滞在していた魏无羡と、蔵書閣で過ごしていた日のことだった。何かとちょっかいを出してくるこの少年に煩わしさを感じつつも一方でその自由さに憧れる気持ちもあった。しかし、彼が悪戯で見せてきた春宮図には、さすがに怒りを覚えた。はずだった。

その夜いつも通りの時間に床についた蓝忘机だったが、夢の中では蔵書閣での出来事が繰り返されており、あろうことか蓝忘机は魏无羡に対して激しく欲情していた。男同士のそれがどのように行われるかを知っていたわけではない。ただ、夢の中では己の欲するままに彼を求め、幾たびも彼の中で果てた。

翌朝目を覚ますと、夥しい白濁が下半身を汚していた。自分が魏无羡を汚してしまったようで後ろめたかった。話しかけてくる彼に悟られぬよう、そっけない返事しか返せなかった。

やがて彼に対する自分の気持ちが、性欲というよりは天から与えられた半身と一つになりたい思いであることに気づいた時、自然と旋律が心に生まれ流れ出たのだが、それはまた別の話。

 

自ら邪の道に踏み入れ一人で闘う魏无羡をなんとしても自分の手元に隠し守りたい。その思いは叶うことなく彼はこの世を去った。痕跡だけでも残したいと彼と同じ刻印を我が身に刻んだその日から、蓝忘机の陽物は立ち上がることをやめた。

 

それから十数年。

 

特に何か特別な日だった訳ではない。少なくともその時はそう思っていた。朝、いつもの時間に目覚めた時、蓝忘机は我が目を、いや我が身を疑った。自分の中心が痛いほどに立ち上がり、熱く脈打っているのを感じた。それはまるで、今までただの物体だったものに生命が吹き込まれた、そんな様子だった。

魏婴、君が、還ってきたのか?

蓝忘机は自らのものを握りしめて、愛しい人の名前を呼んだ。