Another Words

突然創作を載せたり載せなかったりします。

決別の辞

ねえ子琛、君に、聞いてほしい話がある。

君がここにいることを知っていたのに、私はずっとここに来ることができなかった。君に合わせる顔がなかった。自分の犯した罪に向き合う強さがなかった。私には、私自身が考えていたよりずっと弱い、小さい心しかなかったからね。

だけどいつまでも目を背けていても何も変わらないし、いつまでも今のままではいられないから、自分の気持ちに整理がついたところで、今日はちゃんと話そうと思う。

返事はできなくても、聞こえているんだよね、子琛。

 

あれからいろいろ考えた。最初は、死んでしまいたいと思った。そうすれば君のそばに行けると思ったし、そうしない限り君に許されないと思った。だけどできなかった。天は私をそんなに簡単には死なせてくれないのだと思った。次に、薛洋を殺して君や、私が誤って殺めてしまった人たちの仇を討って、それから命を絶とうと考えた。実は今でもそれは気持ちの中にある。選択肢としてはとっておいてある。

だけどね。

天がなぜ私を生かしたのか。なぜ死なせなかったのか。きっと理由があるはずだと思ってずっと考えていた。そして一つ思い当たったことがあった。

世を正す、なんて、目の前にいる、間違った道を選ばざるを得なかったたった一人をさえ正せない人間に、そんなこと出来っこないんだ。私の力は小さくて、世を正すにはとても足りないけれど、一人の道ならば、そばにいることで正せるのかもしれない。

薛洋はきっと、ずっと一人で寂しかったんだよ。誰も頼れる人もなく、信じられる人もいない。自分が何を言おうと信じてもらえず、近寄ってくるのは自分を蔑みつつ利用しようとする人間だけ。もし自分がそうだったら、私も彼のようになっていたのかもしれない。たまたま私は運がよく、彼はそうではなかっただけなのではないかな。

だから、私が彼を、信じようと思う。

君は私を愚かだと思うかもしれないね、子琛。私も、自分がとても馬鹿げたことを考えているのかもしれないとわかっている。でもね。私が共にいる以上、彼にはもうこれ以上罪は犯させない。彼の負うべき罪を共に背負い、彼の進むべき道を共に進んで正していくことが、天が私を死なせなかった理由なんだと思う。

もし私では彼を止められないようだったら、その時は彼とともに私を殺してほしい。

 

彼に、君を自由にしてくれるように頼んでみるつもりだ。彼がそんなことをするはずがないと思うかい?でも頼んでみる意味はあるよね。よくわからないけど、きっと彼は私の願いならひとつくらいは聞いてくれると思う。なら、私は他の何よりもそれを願ってみるよ。

 

そしてこれは、私から君に対する別れの挨拶でもある。私は彼と同じ道を行くことにしたから、これから先、君とは行けない。せっかく君が私を探し出してくれたのに、君の命を奪った上に、交わした誓いを守ることもできない。そのことについては本当にどんなに詫びても許されることではないと分かっているから、好きなだけ責めてくれても恨んでくれてもかまわないし、この命を差し出してもいい。全部受け入れるよ。

ただ、私を殺すのならば、薛洋も共に殺してくれ。彼を殺したいのならば、私も共に。

 

 

私の唯一のかけがえのない友、子琛。君の志がかなうことを信じている。