Another Words

突然創作を載せたり載せなかったりします。

知己

「宋道長、夕べは楽しんでもらえたかな?」

翌朝、暁星塵が朝餉の準備のために寝室から出ている間に、薛洋が隣の部屋に現れた。

「はははっ、たっぷり出したなあ。まあ、あの高潔な清風明月があんなにいやらしく腰を振ってるんだから、見たらだれだってたまらねえだろ。見られてると思うと俺もいつもより興奮したから、あいつも喜んでたしな」

そういいながら、宋嵐の衣をはだけ、漏らしたものをふき取る。

「まあ、あいつだったらお前のでも嘗めて綺麗にしてくれるかもしれないが、あいにくと俺はそんなにお優しくないんでね」

雑にふき取ると、適当に衣を着せる。それから苦労して椅子へ移動させ、なんとか座らせた。

宋嵐は怒りで顔を真っ赤にしている。
「まあ、あとでゆっくり話はさせてやるよ」
薛洋はそう言い残して部屋を出て行った。

 

昼過ぎ、買い物に出かけていた暁星塵が戻ってきた。薛洋は
「お帰り道長。例の知り合いが来てるんだけど、ちょっと毒にやられてて、奥の部屋にいる」

昔の知り合いだ。向こうは会いたくもなかったと思うが。毒にやられている。その毒は俺がやったんだけど。奥の部屋にいる。いるのは昨日からだけど。嘘は一つしかついていない。そう思いながら、奥の部屋へ道長を連れていく。

「誰だと思う?」

と言いながら、宋嵐の正面に暁星塵を連れていく。

「私の知っている人ですか? まさか…子琛?」

あわてて両手で顔を探ると、それは紛れもなく、懐かしい知己の顔だった。

子琛、子琛、いったいなぜ?誰が毒を?なぜ返事をしない?子琛!」

「悪いな道長、俺ひとつだけ嘘ついた。そいつは昨日からそこにいた」

「私の留守中に訪ねてきたのですか?なぜ嘘など」

「そうでないと昨夜道長のこと抱いてやれなかったからな」

「もしかして、あなたが毒を使ったのですか小友?」

「ああ、そうしないとこいつが道長を連れて行っちゃうからな」

「いったいどんな毒を?子琛は助かるのですか?早く、毒消しを」

「声と体の動きを封じる毒だ。毒消しがあれば命に別状ない」

「よかった、子琛。早く、早く毒消しを」

「そんなに簡単にやれるわけがないだろ?そいつは道長の知己ってやつで、元気になったら道長を連れていくだろうから」

「どうしたら毒消しをくれるんですか?」

道長、そいつと一緒にここを出ていかないと約束してくれ」

「…わかりました。約束します。私はここにあなたと残ります」

「おや、ずいぶんとあっさり了解したな。そんなに俺とやるのがいいのかな?」

「やめてください、そういう話をしている場合ではない。早く毒消しを」

しぶしぶといったていで薛洋が毒消しを渡すと、暁星塵は大急ぎで宋嵐の口をあけて中に入れる。しかし毒によって体の力が失われている宋嵐はそれを飲み込むことができない。

「待っていろ子琛、今水を持ってくる」

そういって部屋を出て行った暁星塵は、すぐに湯飲みに水を入れて持ってきた。湯飲みから飲ませようとするが、飲み込むことができないためにだらだらと口からこぼれる。少しためらったあと、暁星塵は口に水を含むと宋嵐に口移しで飲ませた。やっと薬を飲み込んだ宋嵐。体が自由になるまではまだ時間がかかりそうだったが、声が出るようになって真っ先に口にしたのはこんな言葉だった。

「星塵、お前、その男が誰だかわかっているのか?そいつは薛洋だぞ」

 

 

 

 

「宋道長、夕べは楽しんでもらえたかな?」
翌朝、暁星塵が朝餉の準備のために寝室から出ている間に、薛洋が隣の部屋に現れた。
「はははっ、たっぷり出したなあ。まあ、あの高潔な清風明月があんなにいやらしく腰を振ってるんだから、見たらだれだってたまらねえだろ。見られてると思うと俺もいつもより興奮したから、あいつも喜んでたしな」
そういいながら、宋嵐の衣をはだけ、漏らしたものをふき取る。
「まあ、あいつだったらお前のでも嘗めて綺麗にしてくれるかもしれないが、あいにくと俺はそんなにお優しくないんでね」
雑にふき取ると、適当に衣を着せる。それから苦労して椅子へ移動させ、なんとか座らせた。
宋嵐は怒りで顔を真っ赤にしている。
「まあ、あとでゆっくり話はさせてやるよ」
薛洋はそう言い残して部屋を出て行った。

昼過ぎ、買い物に出かけていた暁星塵が戻ってきた。薛洋は
「お帰り道長。例の知り合いが来てるんだけど、ちょっと毒にやられてて、奥の部屋で休んでいて道長に会いたがってる」
と声をかける。
昔の知り合いだ。向こうは会いたくもなかったと思うが。毒にやられている。その毒は俺がやったんだけど。奥の部屋にいる。いるのは昨日からだけど。よし、嘘は一つしかついていないな。…そう思いながら、奥の部屋へ道長を連れていく。
「誰だと思う?」
と言いながら、宋嵐の正面に暁星塵を座らせた。
「私の知っている人ですか? まさか…子琛?」
あわてて両手で顔を探ると、それは紛れもなく、懐かしい知己の顔だった。
「子琛、子琛、いったいなぜ?誰が毒を?なぜ返事をしない?子琛!」
「悪いな道長、俺ひとつだけ嘘ついた。そいつは昨日からそこにいた」
「私の留守中に訪ねてきたのですか?なぜ嘘など」
「そうでないと昨夜道長のこと抱いてやれなかったからな」
「もしかして、あなたが毒を使ったのですか小友?」
「ああ、そうしないとこいつが道長を連れて行っちゃうからな」
「いったいどんな毒を?子琛は助かるのですか?早く、毒消しを」
「声と体の動きを封じる毒だ。毒消しがあれば命に別状ない」
「よかった、子琛。早く、早く毒消しを」
「そんなに簡単にやれるわけがないだろ?そいつは道長の知己ってやつで、元気になったら道長を連れていくだろうから」
「どうしたら毒消しをくれるんですか?」
道長、そいつと一緒にここを出ていかないと約束してくれ」
「…わかりました。約束します。私はここにあなたと残ります」
「おや、ずいぶんとあっさり了解したな。そんなに俺とやるのがいいのかな?」
「やめてください、今はそういう話をしている場合ではない。早く毒消しを」
しぶしぶといったていで薛洋が毒消しを渡すと、暁星塵は大急ぎで宋嵐の口をあけて薬を含ませる。しかし毒によって体の力が失われている宋嵐はそれを飲み込むことができない。
「待っていろ子琛、今水を持ってくる」
そういって部屋を出て行った暁星塵は、すぐに湯飲みに水を入れて持ってきた。湯飲みから飲ませようとするが、飲み込むことができないためにだらだらと口からこぼれる。少しためらったあと、暁星塵は口に水を含むと宋嵐に口移しで飲ませた。やっと薬を飲み込んだ宋嵐。体が自由になるまではまだ時間がかかりそうだったが、声が出るようになって真っ先に口にしたのはこんな言葉だった。
「星塵、その男が誰だかわかっているのか?そいつは薛洋だぞ」
[newpage]
「知っていた」
暁星塵の答えに、後ろで様子を見ていた薛洋は驚いたようで、言葉を失っている。
宋嵐も衝撃を受けていた。昨日から続く一連の出来事の中でも、最大の衝撃だった。
「暁星塵、正気なのか?あの薛洋なんだぞ。あの薛洋と、あんな…」
「知っていた、と言っている。私が君に嘘をつくわけがないだろう、子琛」
「なぜだ?なぜ、こんなことに」
「いいから、私にかまわず、君は一人でここを離れてくれ」
「君は、まさか、本当に堕ちてしまったのか?」
「君にそう見えるのならばそうかもしれない。昨日からここにいたのなら、知っているのだろう?」
「ああ、そいつがわざわざ特等席を用意してくれてたからな」
宋嵐は吐き捨てるように言った。
「もう君のことを知己とは呼べないと思っている。誓いを破ってしまったことは、どんなに詫びても許されることではない。子琛、もし少しの旧情があるのなら、私のことは忘れて、ここから一人で去ってほしい」
「頼む星塵、正気に戻ってくれ。まだ間に合う、まだ君は私の知己だ。そうでないと私は、この目を君から奪っただけの人でなしだ」
「聞いていただろう子琛、私は彼とここに残ると約束をした。君とは行かないと」
「それは、毒消しのためにしかたなく言ったのだろう?そんな約束を守る必要がどこにある?」