Another Words

突然創作を載せたり載せなかったりします。

2022-01-07から1日間の記事一覧

血の匂い

その日も薛洋は宋嵐を伴って「夜狩」と称するなにかのために出かけていた。夜半から降り出した雨がやがて雷を伴う豪雨となり、窓から風雨が吹き込む。肌掛け代わりにしていた外衣を身体に巻き付けて、暁星塵は寒さに震えていた。 いったいいつになったら私は…

闇夜の宴

少し経つと、薛洋は時々夜にも出かけるようになった。二人分の足音が聞こえるのは、おそらくは宋嵐を伴っているのだろう。陰虎符で操られる傀儡となった宋嵐を使って、薛洋が一体どのような悪事を働いているのか、それを考えると恐ろしくもあった。しかし、…

浅い眠り

薛洋は朝餉のあとすぐ出かけて、夕方遅くなるまで帰ってこない、そんな日が続いた。もともと小食の暁星塵は特に昼時に腹を空かせることもなかったが、寝台のそばにはいつもいくつかのお焼きと水、時にはみかんや飴が置かれていた。そしてそれに口をつけよう…

ひとつだけの生きる理由

暁星塵は霜華を拾い上げ、自らの命を絶とうとした。 が、手の届くところに霜華はなかった。ならばと舌を噛み切ろうとするも、猿轡をかまされてしまう。「悪いな暁星塵。あんたを死なせるわけにいかないんだ」薛洋の声が聞こえる。それから鈍い痛みを首に感じ…